イオン化エネルギー・電子親和力

 基底状態にある気体電子から、その電子を1つ取り出し、無限遠まで運び去るのに必要な最小のエネルギーをイオン化エネルギーという。原子の電子構造を考え、イオン化エネルギーの原子番号依存性をプロットすると、電子を1つ失うことで安定な閉殻構造が壊される第18族元素において、イオン化エネルギーは極大となり、逆に電子を1つ失うことで安定な閉殻構造となる第1族元素においてイオン化エネルギーは極小になる。

一方、基底状態にある気体原子に電子を1つ付与し、1価の気体陰イオンとなるときに放出するエネルギー(電子保護エンタルピーの符号を変えたもの)を電子親和力という。したがって、電子親和力は符号が正の場合も負の場合もあるが、この値が正で大きいほどイオンになりやすい。また、各原子の電子構造を考えると、電子を1つ獲得することで安定な閉殻構造となる第17族元素において、電子親和力は極大となる。

ここで、分子や結晶において1つの原子が電子を引き寄せる能力を示す尺度のことを電気陰性度という。Mullikenは電気陰性度をイオン化エネルギーと電子親和力のとして定義している。電気陰性度はある原子が電子を放出しにくく、また電子を受け取りやすい場合に大きな値を示す。

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 これは第1イオン化エネルギーの図。

a) 同周期の元素では、原子番号が大きいほど第一イオン化エネルギーが増加する傾向がある。理由を説明せよ。

原子番号が大きくなるにつれて、原子は小さく核電荷は大きくなり、電子が核に引きつけられる力が大きくなるため。

 

b) 希ガス元素では、原子番号の大きいほど第一イオン化エネルギーは小さくなる。理由を説明せよ。

核から最外殻電子までの距離が遠くなるため、クーロン引力が小さくなる。また有効核電荷の違いはそれほどないため、イオン化エネルギーは小さくなる。

 

c) Kの第一イオン化エネルギーは同周期のCaより小さい。しかし、第二イオン化エネルギーはKの方がCaより大きい。理由を説明せよ。

第一イオン化エネルギーとは電子を1つ取り去るのに必要なエネルギーであるから、有効核電荷が大きいCaの方が第一イオン化エネルギーは大きい。第二イオン化エネルギーとはその次に電子を1つ取り去るのに必要なエネルギーであり、1つ電子を取り去ったKはArと同じ閉殻構造であるから、Kの方が大きくなる。

 

d) 第二周期の元素(Li - Ne)を比較すると、基本的には原子番号が大きいほど第一イオン化エネルギーは増加するが、BとOの場合だけ例外的に減少する。理由を説明せよ。

Bの場合、エネルギーが低くより安定な2s軌道から電子を取り去るよりも、2p軌道から電子を取り去る方が容易であり、これが有効核電荷の違いより大きく影響するため。

Oの場合、2p軌道に入る4個目の電子が3つのp軌道のいずれかの軌道に異なるスピンを持って入り、電子間の静電的な反発エネルギーが、有効核電荷の違いによる影響より大きいため。