分子軌道法

(1) 水素原子の波動関数は、主量子数 n 、方位量子数 l 、磁気量子数 m の3つの量子数により指定される。量子数 n, l, m のとり得る値の範囲を示せ。

n = 1, l = 0, m = 0

 

(2) He原子のイオン化エネルギーIP(He) と He+ イオンのイオン化エネルギーIP(He+) の大小関係をその理由とともに示せ。

He+の構造は水素原子Hの構造に等しい。イオン化エネルギーは第18族元素が極大であるから、 IP(He) > IP(He+)

 

(3) 炭素原子の電子配置を原子軌道のエネルギー準位図を用いて示せ。また電子配置がそのようになる理由も示せ。

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パウリの排他原理により、1つの軌道には2つの異なるスピンをもった電子が入る。2p軌道は3方向あり、フントの規則によってスピンを平行にして2p軌道のいずれかに1つずつ電子が入る(図では2px, 2py 軌道としている)。

 

(4) H2 分子はイオン化すると結合エネルギーが小さくなる。一方、O2 分子はイオン化することにより結合エネルギーが大きくなる。H2 と O2 でこのような違いが生じる理由を分子軌道法に基づいて示せ。

 

(a) 水素原子の電子配置を示せ。さらに、原子のイオン化エネルギーとはどのような過程に要するエネルギーか、水素原子を例に説明せよ。

1s軌道に1つ電子がある(図省略)。イオン化エネルギーとは、ここでは水素原子から電子を1つ取り除き水素イオンにする過程に要するエネルギーのことである。

 

(b) 2個の水素原子が接近すると、平行原子間距離が 0.74[Å] の水素分子をつくる。水素原子が安定な分子を形成する理由を説明せよ。

 

(c) 水素分子、窒素分子、フッ素分子の中で結合エネルギーが最大のものはどれか。また最小のものはどれか。そのように結論される理由も述べよ。

 

(穴埋め問題)

14族元素(4B元素)では、原子番号が増えるにしたがい 非金属 性元素から 金属 性元素への変化が見られる。非金属性の強い元素である 炭素ケイ素ゲルマニウム においては、原子の最外殻に基底状態で球対称の s 軌道と方向性のある p 軌道に2ずつ電子が入っている。このため原子価は 2 価であるように思われるかもしれないが、s軌道の2個の電子とp軌道の2個の電子を用いてsp^3混成軌道を形成するため、4 価の原子化となる。例えば、炭素は基本的には原子1個あたり4本の結合を形成する。このため、炭素の同素体であるダイヤモンドは 正四面体 型構造をとり、各原子は共有結合によって結ばれている。ケイ素やゲルマニウムも4本の結合を形成して ダイヤモンド 類似の構造を持ち、原子間は共有結合で結ばれ安定である。高純度な結晶性ケイ素はハロゲン化物を水素化してつくられ、さらに生成されて 半導体 として広く利用されている。一方、金属性の強い スズ や  では2価と4価の化合物が存在するが、特に鉛では、p軌道の2個の電子を失い2価イオンをつくりやすい。