原子構造(量子論)

量子論が提案される以前には、水素原子の電子状態に関してBalmerなどの観測した発光スペクトルやRydbergの水素原子スペクトル系列の関係式などが知られていた。例えばBalmerが発光スペクトル中に見い出したBalmer系列は、Rydbergの式のn=2に対応する。Bohrはこれらの実験事実をもとに、(1) H+の周りを電子が 等速円運動 し、 (2) その 角運動量 がPlank定数の整数倍である、というモデルを提唱した。後に量子論をより発展させたSchrodinger方程式が現れ、水素原子の電子が占める軌道を表わす波動関数が計算された。この波動関数は3種類の量子数、すなわちエネルギーに関わる 主量子数(l)角運動量の大きさに関わる 方位量子数(n)角運動量のz軸方向成分に関わる 磁気量子数(ml) で表される。また多電子原子では、水素電子の波動関数に補正を加えた水素類似原子の波動関数で電子の軌道を表わす。多電子原子の基底状態の電子配置は、電子をエネルギーのより低い軌道から順番に割り当てることで近似的に表される。この際、各軌道には Pauliの排他原理 にしたがって最大2個の電子を割り当てる。またp軌道のようにエネルギーの縮重した軌道に複数の電子を割り当てる場合は Hundの規則 に従う。

 

  •  パウリの排他原理(Pauli exclusion principle)

1つの軌道に収容される電子は最大2つまでであり、同じ軌道に収容されるとき、2つの電子は異なるスピンを持つ。しばしばスピンは上下の矢印で示される。

  •  フントの規則(Hunt's rule)

 同一エネルギー軌道に電子が配置されるとき、可能な限りスピンを平行にして別々の軌道に収容される。

・1個の基底状態の水素原子がH+になるのに必要なエネルギー(波長単位)は、R_Hを使ってどのように表せられるか説明せよ。

題意より

\Delta E = R_H\( \frac{1}{1^2} - \frac{1}{\infty^2} \) = R_H

・炭素原子、酸素原子、ネオン原子の電子配置を示せ。

炭素 → (1s)^2 (2s)^2 (2p)^2

酸素 → (1s)^2 (2s)^2 (2p)^4

ネオン → (1s)^2 (2s)^2 (2p)^6

 

・上のうち、分子を作らずにそのままで安定に存在できるものはどれか。また、その理由を述べよ。

ネオン。分子軌道法によれば、結合次数が0となり、分子を作る必要がないため。

 

・炭素原子は水素原子4個と結合して安定なメタン分子を作るのに対して、酸素原子は水素原子2個と結合して安定な水分子をつくる。炭素原子と水素原子で結合できる水素原子数が異なる理由を述べよ。

(図を書く)炭素原子は3つの2p軌道のうち、2つに電子が1つずつ入っている。炭素原子は結合するとき、2s軌道の電子を励起させることでsp^3混成軌道を作る。この4つの軌道にそれぞれ水素原子が結合するため、水素原子4個と結合するときが最も安定である。酸素原子は3つの2p軌道のうち、1つは電子で埋まっており2つは電子が1つずつ入っている。この軌道に水素原子が結合するため、水素原子2個と結合するときが最も安定である。